OTHER

歩きまわる窓

戸塚伸也+百瀬陽子 二人展

2021年5月10日〜5月18日 ART TRACE Gallery

May Be

30cm×30cm 木製パネル・石粉粘土・寒冷紗・ジェッソ・アクリル絵具・油絵具 2020

May Be    
誰かに聞いた話、かもしれない
 二人の姪がいる。兄の子どものサユちゃんと、妹の子どものルーちゃん、同い年の五歳だ。二人ともちょっと不思議というか、雰囲気が独特だと思う。大人には分からないやり方でコミュニケーションをとっているようだ。親戚で集まるといつも二人だけでコソコソ遊んでいる。
 ある正月、実家で、サユちゃんが森のような絵を描いていた。何を描いているのか話しかけてみたら、ジャングルとヘビ、と言っていた。一緒に絵を描いていたルーちゃんは、ワニもいる、と言った。このお水の中にワニがいるの?怖いねーと答えると、窓がついたワニだから大丈夫、とどちらかが答えた。その次に、飛行機にも乗れる!と言って、そのあとはこちらに見向きもせずお絵かきに熱中した。
 あとで二人に飴をあげたら、妹に、虫歯になるから勝手にあげるなと怒られた。
 八歳くらいの時、家族で北海道旅行に行った。ずっと平らで、異国のような景色が延々と続いていた。父が運転するレンタカーに何時間も乗った。
 一つ違いの姉と私は当時ジェニーちゃん人形が好きで、北海道のホテルにもお人形を持っていった。姉はジェニーを、私はジェニーちゃんシリーズの中のオリーブという人形を買ってもらっていた。ホテルの部屋でお人形遊びをしていると途中でケンカになり、姉が私のオリーブを奪って投げつけたら、ホテルのベッドの隙間に入ってしまった。両親がベッドを動かして取ってくれた。普段は仲良しの姉妹だったので、私にとってこれは特に大きなケンカの記憶だ。
 ただ、大人になってからその時のことを姉に聞いても両親に聞いても、覚えていないと言われた。ホテルの部屋で姉と遊んでいる写真は残っている。
 特に病弱というわけではなかったけれど、小さい頃は何かと入院していた。その時にたまたま同じ病室だった子と仲良くなったみたいで、退院後に一度だけ遊んだことがある。よっちゃんだったか、いっちゃんだったか、名前も忘れてしまった。あまり喋らない子で、岐阜県あたりに住んでいたような気がする。
 その子の家に遊びに行き、一緒に紙箱でお城を作った。たしか秘密の部屋みたいなのを設定して、ごっこ遊びをしたと思う。低いイスを机代わりに工作をしている二人の写真が残っている。
 おやつを食べるときは母も多分そこにいて、その子の母親と私の母とで話が盛り上がっていた。私は大人たちの話が終わるのを待ちながら、でもその子とは特に喋ることもなかったので、テレビから流れるどこかの外国の風景映像をぼんやり眺めていた。
百瀬陽子 2020年

 

おばけの祈り

23cm ×23cm × 23cm 紙粘土、アクリル絵具、油絵具 2019

散歩の短さについて @ARTTRACE gallery 両国

『不思議な世界ね』 "What A World" 

『不思議な世界ね』 紙粘土・石粉粘土・オルゴール・アクリル絵の具  / 2018

『What A world』 music box, mixed medium / 2018

足下から空を蹴る "KICKING THE SKY UP" 2018.4.1.-4.10. ART TRACE GALLERY

シャッフル展 "Are we open?" 2017.6.23.-7.11 ART TRACE GALLERY

"Make Love With Gallery" by YokoMOMOSE & Yuu 

"いとしのサハー My Dear Saha" 2017.2.8.-2.26 工房親(恵比寿映像祭関連企画)

実家の一軒家は築35年の日本家屋だ。

廊下の隅や隙間などはたいてい闇で、 小さい頃は、電気を消したら絶対うしろをふり向けなかった。

生まれたときから同居していたおばあちゃんが、昨年亡くなった。

プライドが高く気が強いお姫さまのような性格だったけれど、徐々に身体が弱くなり、

最期は穏やかな状態で家族に看取られて亡くなった。

長く病んだ晩年は骨と皮だけで、あちらの世界の住人がこの世に生きているようだった。

私たち家族は背中の曲がった小さな妖精と特別な時間を過ごした。

 

おばあちゃんはある時から幻覚を見るようになった。

電球の穴から人がいっぱいこちらをのぞきこんで、にぎやかに笑っていたそうだ。

私はよくおばあちゃんの夢を見る。近所の人が幽霊になったおばあちゃんを見たとか、

家族と一緒におばあちゃんがいるけど、それは生前の生き霊だとか言われる夢だ。

  

亡くなる前日、病室のおばあちゃんは、鼓動を打つことだけを繰り返していた。 瞳孔はもう開いてしまっていた。

私はおばあちゃんの顔をスケッチした。 こんなにまじまじと見つめたことは初めてだった。

もうすぐ途切れる生命を見つめながら、おばあちゃんという人はどういう人だったのか、

私はよく知らなかったことに気づいた。

 

おばあちゃんと過ごした記憶は鮮明だけど、私が知らなかったおばあちゃんの姿を今は 知ることができない。

一方でおばあちゃんの過去にさかのぼろうとイメージを手繰れば、

私が知っている鮮やかなおばあちゃんはうすれてしまうかもしれない。

ただそこで現れるのはどちらもおばあちゃんで、それはうねりながら存在している。

近くにいるような気がするけど、どこにもいないような気がする。

かとおもえばまたすぐ近くで見てるような気もするし、 やっぱりもうどこにもいないんだとも感じる。

そんな風に、おばあちゃんはまだら模様にうねっていく。

おばあちゃんと過ごした家の柱のしみや扉の隙間には、
ふり向いたらおばあちゃんがいるような気がして、また会えるんじゃないかと時々見つめたりする。

悪夢 Night Mare"  2016.3.24.-4.12. Art Trace Gallery

Whereabouts of Soap Bubbles / Installation at Gellery RIN / 2008

Whereabouts of soapbubbles

Measuring the distance of reality.
The verdure, the transparent light, the heart of a door, a bamboo grove..
a persimmon tree, the feather of a cock, a swing..
Measuring it from behind all of them.
Adults are always right.
I don't have any courage to reach out to reality,
Clinging to my house, an opaque charm sweeps me away,
Being covered by a warm film.
I am under the illusion that my body is filled with lightness
The charm, it comes up to me.
But I am on the point of grasping it,
it dissolves into nothingness.
The viscera of colors remain,
And the light which cannot touch me.
Measuring the distance of reality.

 

 

 

シャボン玉のゆくえ

 

彼女は現実との遠さをはかっている。
みどりの、透けた光の、山の奥の、飛び石の…
引き戸の闇、竹やぶ、柿の木、鶏の羽、ブランコ…
それらすべてのうしろから。
おとなはいつも正しい。
手をのばせば届きそうな現実に、手をのばす勇気はなく
わたしの家にしがみつきながら、不透明な魅惑に押し流され
あたたかい膜におおわれて、身体は軽いと錯覚する。
魅惑は、こちらに向かってやってくる。
さわろうとしても、つかんだ先から頼りなくにげてゆき、
絵の具の内臓がのこり、
そしてさわれない光。
彼女は現実との遠さをはかっている。


NEWS!

歩きまわる窓

ART TRACE Galleryで行われた、戸塚伸也・百瀬陽子『歩きまわる窓』は、2021年5月10日〜5月18日に開催されました。

https://www.gallery.arttrace.org/202105-momose.html

 

 

展示作品は、こちらのサイトでオンライン販売しております。

https://walkingwindows.stores.jp/

 

展示作品について、アーティストトークを配信中です。ぜひご覧ください。

https://www.youtube.com/playlist?list=PLvomhTJ8r2RU_ByzP6aFzSj9vFw6Zr8rT

さまざまな形さまざまな色

https://www.kobochika.com/homepage/html/topics.html
2020年11月14日(土)~12月20日(日)
https://www.kobochika.com/homepage/html/exhibition_20201114.html


雨宮透 石井絵里子 一条美由紀 大渕花波  押鐘まどか 架菜梨案 鬼頭明稚 

クボタタケオ 小林晴郎 小林真理江 

榊原勝敏 阪本あやこ 作間敏宏 さとう陽子  
椎葉聡子 田中隆史 田中紗樹 西川雅典  西山晴恵 似内美乃里 根本篤志 野口大地  
長谷川誠 花村泰江 福室みずほ 堀部由佳子  松本晃 百瀬陽子 山神悦子 山崎弘義  
好宮佐知子  (50音順)

2020年1月15日〜2020年2月9日
"Take me to your home
ART TRACE Gallery

さまざまな形、さまざまな色


会期:2019年11月23日(金)-12月23日(日)

Contemporary Art Gallery CHIKA

https://www.kobochika.com/homepage/html/exhibition_20181123.html

足下から空を蹴る

KICKING THE SKY UP

2018.4.1. Sun. - 4.10. Tue.
12:00 - 19:00

トークイベント 4.7. Sat. 16:30 - 
ART TRACE Gallery

http://www.gallery.arttrace.org 

出品作家

山田あゆみ

衛藤文俊

小林晴郎

百瀬陽子

本展覧会は、絵画表現を出発点に制作を続ける四人の作家の「創作過程」に注目する企画展です。タイトルにある「足下」とは、足で隠れて見えない地面を指します。作品の鑑賞において、創作過程とは足下のように隠された部分ですが、同時に作家の現在を支えるものです。
 美術作品の創作過程として、本展では具体的な作品制作についてだけでなく、幼少期の経験や影響を受けてきた表現など手を動かして制作する以前の観察者としての姿勢も取り上げ、これらをインタビュー集や個人史の展示、またトークショーによって、作品と併行させて公開します。
 それぞれの「足下」を基点に、美術というつかみどころのない「空」に向かって作家は何をどのように蹴り上げているのか。創作過程と美術作品の相互反応を会場で感じていただけたら幸いです。
 ギャラリーでは、作家たちの作品画像を盛り込んだインタビュー集と、くじ引きで購入できる小品販売もいたします。どうぞお誘い合わせの上お越しください。

企画 百瀬陽子

シャッフル展 "Are we open? 

ART TRACE GALLERY

June 23 – July 20,  2017 12:00-19:00 

 

この企画展は、参加作家たちが「単一の作家像」といった概念を一旦取っ払ったところで、どんな制作プロセスが可能かを検証する実験的なプロジェクトです。参加メンバー10名はランダムに シャッフルされ、5組のペアを組んでいます。各ペアの開始点は、既存作品を意見書・指示書といったメモのやり取りを介しながら往還させたり、全く新たな作品を共同で制作したり、さまざまです。会期中、ギャラリーは共同アトリエとして開かれ、やり取りはペア間から参加メンバー全体に開かれます。作家同士で互いに意見交換することや、訪問者から直接フィードバックをもらうことは、作品のインスピレーションになるだけでなく、作家たち自身にとっても、普段のグループ展では味わえない新たな発見や認識の気づきを与えてくれる筈です。この企画展は、単に作品を集めて展示するのではなく、作品を協業して展示することを目的とした、臨場感あふれる試みです。

百瀬陽子 個展 "My Dear Saha"『いとしのサハー』

東京都写真美術館主催恵比寿映像祭の地域連携プログラムとして、広尾のギャラリー「工房親」 にて個展を行います。

http://www.kobochika.com/homepage/html/now.html

●2017年 2月 8日(水) ~ 2月 26日(日)、(月)休廊
●オープン12:00 クローズ19:00 ただし(日)(祝)(最終日)18:00まで
●ギャラリー工房親(こうぼうちか) 〒150-0013 東京都渋谷区恵比寿 2-21-3
●オープニングパーティー 2月10日(金)18:00~ 20:00

※18:40からパフォーマンスを行います

まちの展Vol.3

2016.10.1.sat.-10.10.mon.

11:00 - 17:00 (10/2, 8, 9; 10:00 - 18:00)

茅野市民館市民ギャラリー

長野県茅野市塚原1-1-1

tel : 0266 82 8222

 

http://www.chinoshiminkan.jp

諏訪地域、松本、東京の作家による作品展。今回で3回目の開催です。

市民ギャラリー、本棚ギャラリー(矢崎書店内)に様々なジャンルの作品を展示します。

8日(土)にアーティストトーク、10日(月)にクロージングレセプション、バンド演奏を行います。

 

谷川佳代子 百瀬陽子 二人展

悪夢

2016.3.24.Thu.〜4.12.Tue.

 

ART TRACE GALLERY

130-0021 東京都墨田区緑 2-13-19 秋山ビル1F

1F,Akiyama bldg.,2-13-19,Midori,Sumida-ku,Tokyo 130-0021,JAPAN

TEL 050-8004-6019

JR総武本線両国駅東口から徒歩9分
都営大江戸線両国駅A5出口から徒歩5分

http://www.gallery.arttrace.org

 

柳田愉美子 百瀬陽子 肖像画展

 

2015.10.26.Mon.〜11.1.Sun.

月光荘画材店・画室1(B1F)

中央区銀座8-7-2 永寿ビル1F・B1F

TEL 03-3572-5605

 

またまた二人展です。柳田愉美子さんとは、画家友達として、また絵のモデルとして長年関わってきましたが、今回彼女の制作から発想を得て、私も肖像画のみの作品を初めて発表します。どうぞお越し下さい。

http://gekkoso.jp

 

Melting Tree

百瀬陽子|クロエ・ジャフェ

2015.04.22 - 2015.04.26            12:00-19:00(最終日17:00)     遊工房アートスペースhttp://www.youkobo.co.jp/exhibition_events/2015/03/melting-tree.html      『画家・百瀬陽子とフランス人写真家・クロエ・ジャフェによる写真と絵画のコラボレーション作品。違う言語と環境で生きてきた同世代の女性二人が出会い、感覚を共有し、感情を分け合い、交りあう瞬間に立ち会う。親密な二人展。』

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